とある物語の終わり、とある物語の始まり
        ―Side storia―


ヒュンッ
愛剣を的に向かって投げつける。
案山子のその胴体に一文字の傷を与え、手元に戻る剣。
二刀一身の夫婦剣、漆黒の光を放つ、名を『干将』
戻ってくる干将を引き寄せ、その勢いのまま案山子へと剣を奔らせる。
二刀一身の夫婦剣、純白の光を放つ、名を『莫耶』
斬っ
物言わぬ案山子はその存在すらをも等分にされ、地へ堕ちる。

うん、中々イイ調子だと自画自賛する。
今日はここで俺…ことストリアはギルドから仕事を回して貰う手筈になっている。
…
…ヤバ
剣に夢中になり過ぎてたことに反省。
街中で剣を振り回してるもんだから白い目が向けられている。
「こほん」
ここはさっさと片付ける事にしよう。
そそくさっそそくさっ…
「おーい!何してるの?」
明るい声が響き渡る。
声の主は…どこにでもいそうな赤毛の少女。
…片付け間に合わなかった
「いえいえ〜単なるお掃除ですよ〜」
仮面ごしの営業スマイルですかさず返答、こういう時は隙を与えないに限る。
「仕事にはまだ時間早いですけどー…どうしたんです、ベルルさん?」
少女は怪訝な顔をしてるけど気にしない。
ベルルと呼んだこの少女、ごく普通の街娘に見えるが…これでも俺ことストリアの雇い
主。
ドゥーというゴブリンと供に色々な冒険を切り抜けてきた人なのだ。
「それはそうだけど…仕事に遅刻しないようにね」
ナルホド、納得…お陰で恥ずかしいトコロを見られたわけだけど。
「ふむふむ、俺もついさっき来たトコなんですよ〜とりあえず依頼人が来るまで腹ごしら
えでもしてましょうか」
ちっちゃな嘘はご愛嬌。
「そうね、何か口にしておいたほうがいいかも」
ベルルさんと共に軽めの食事を頼む。
今にして思えば、この時に引き返しておけば…!!

「お腹ぺっこぺこですよ〜…早く飯こーい」
運動後なんだからお腹が鳴る鳴る。
「ホントにストリアってば食いしん坊ねー」
屈託の無い笑顔でベルルさん。
「育ち盛りなんですよーだ」
食いしん坊は否定しないけどね。

次々へと運ばれる食事、次々へと消える食事。
仮面をつけたまま器用にたいらげていく…密かに自慢だったりするのだ。
周りの人が驚くのも愉しみなのは秘密。

ジー…    美味しそう
もぐもぐ
ジー…    欲しいなぁ
もぐもぐ
「駄目よ?」
ジー…    食べたい
もぐもぐ
ジー…    どうしても
もぐもぐ
「ケチ」

ピキンッ
両者に流れる緊張した空気。
何としてもあの『獲物』は手に入れたい…!
ならば…ここに食事争奪戦を開かねばなるまい!!

「ショーブです、ベルルさん!お互いの食事を賭けて!」
有無は言わせない、これは俺のライフワーク!
「え…ちょ、ちょっと!?」

ふっふっふ…戦闘はマイテリトリー!獲物は頂きも同然!!
「掻き毟れ、雷…サンダァーーストラァイク!」
外に出ると同時にやる気モード全開、周りの人は勿論蜘蛛を散らすかのようにさっと離れ
て行く。
「ス、ストリア!皆の迷惑になるでしょ!」
何かを得るためには犠牲はつきものなんですよ、ベルルさん…!
「飯の為…覚悟!」

ギィン!と鈍い音と共に莫耶の一撃はベルルの斧に防がれた。
「ハァ!」
莫耶が防がれようともニ撃目の干将が襲い掛かる。
しかし、ベルルはその身を返し一撃を空に流す。
「やめなさい、ストリア!」
空を薙ぎ、斧がストリアの身を襲う。
「そんなもの!」
剣を重ね、斧を止めようと試みる…だが、其れこそが失策。
斧の勢いは止まる事無く、仮面の少年の身を薙ぎ飛ばす。
ドン、鈍い音と共に転げる少年。
少女は息を上げながらも無傷。
「くっ、くぅぅ〜〜」
涙が滲む、いつの間にこんなに強くなってるのさ!
ガチャンという断末の音。
「スートーリーアー?」
…ま、負けるというのかこの俺が!?
「…ま、負けてませんよ!?」
「罰としてご飯没収」
「アクマーーーーーーー!」
今流れるこの涙はきっと赤いだろう、ホロリ。

「お待たせ。なんだか楽しそうな事をしているねえ。俺も混ぜて?」
太陽の笑顔を浮かべて現れた神父様。
今の俺には神様です!
「ライさ〜〜〜ん!ベルルさんがいじめるーーー」
がしっと泣きつく…
「むふふ…」
目の前で美味しそうに飯を食べているベルルさんに制裁を!

「やあやあ、みんあ集まってるようだね〜」
ッチ…もう仕事ですか
「ぐすっぐすっ…仕事終わらせてイッパイ食べるもん…」

そんなこんなで始まった新しい物語。
吸血鬼、魔剣、精霊、巨大な竜に謎の組織…
心躍る冒険(特に魔剣ね)に飽きる事は無いみたい。
魔剣を求めて頑張ろう!(違うでしょ!って声は幻聴です
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